Shigure monogatari ("L'ondée")

Entre 1600 et 1650
Encre, Papier
Manuscrit
Legs : Cernuschi, Henri

M.C. 4740

文学と絵は日本では密接に繋がっている(『日本における文学と図像』ジャックリーヌ・ピジョー、1990参照)。10世紀に始まる語りの文学の隆盛は、絵に結びついている。物語は聴衆の前で音読され、聴衆はエピソードを絵で追ったのである。12世紀から16世紀までは、絵巻物が流行する。絵巻物は室町時代(15-16世紀)の終りごろに、絵入りの小冊子に取って変わられる。これは奈良絵本と呼ばれる極彩色の挿絵のついた手書本で、その流行は18世紀後半まで続いた。この貴重な作品はやまと絵風の絵で飾られている。やまと絵は平安時代に生まれ、たいへん装飾的なところが中国絵画と異なる。文章と挿画が絡み合い、ここでの例のように並列されたり、同じページの中で密接に入り組んだりする。17世紀には、文と絵が別れている冊子が流通し、短い間、隆盛を誇ったが、1730年に印刷された本が出て、挿絵入り手書き本を完全に駆逐する。
最初は「雨宿り」というタイトルで知られた『時雨物語』は、16世紀末に現れたもので、京都の清水寺でにわか雨に襲われ出会った若い男女の悲恋の物語である。初版は1661年で、そのときのタイトルは『時雨の縁』だった。
チェルヌスキ美術館所蔵の写本は、部分が抜けているが、型染めで装飾された紙の上に筆で書かれ、12枚の写本装飾の挿絵がついている。そのうち2枚、最初のものと最後のものは見開きにまたがっている。この作品は、大判で、ぜいたくに飾られ、ふんだんに金箔が施され、豪華版の範疇に入るもので、小さく、横長でもっと粗雑な技法で作られた、より一般的に見られるものとは対極にある。
以前は元禄時代(1688-1704)のものと考えられていたが、紙の質と使用されたオリジナルな判型から考えて、この奈良絵本はおそらく17世紀前半のものだろう。判型は18世紀には画一的になってくる。

Reference(s) : «Trésors des musées de la Ville de Paris », Paris, Hôtel de Ville, 1980, n°64. MAUCUER Michel, Musée Cernuschi. Henri Cernuschi 1821-1896, voyageur et collectionneur. Paris : Paris Musées, 1998, n° 121, p. 136.