Boîte contenant des peignes

Anonyme

Entre 25 et 220
Laque, Argent
Boîte
H. 4.3 x L. 5.7 cm
M.C. 10016 b
Don manuel, Deydier, Christian, Deydier, Agnès

この脱胎漆器の箱は隅が「馬の蹄の形」に丸まっている。これは化粧に必要な物をまとめる奩(れん、化粧箱)の部類に入る様々な形の小箱の特徴である。この箱には彫り物をほどこした木製の櫛が4つ入っていた。蓋を飾る、銀をはめ込んだ花の図案はこの種の入れ物にはよく見られる。脱胎漆器の技術が東漢の時代(25-220年)は広まっており、赤い模様の背景の黒色が少し薄く、化粧箱、奩(れん)(MC 10015)よりも自由な作りであることから少し時代の下ったものと思われる。
「馬蹄」型の箱の多くは湖南省長沙地方で発見された。おそらく生産地だろう。銀のはめ込み装飾のあるものは、専門家により東漢時代のものとされることが多い。こうした箱が山東省、莱西(ライシー)市で発見され、今日では国立北京歴史博物館に所蔵されている。もうひとつ類似の物がシュツットガルトのリンデン博物館にも所蔵されている。
奩(れん)の中に収まる様々な形の漆の箱は、中国南部の典型的な高級工芸品として、帝国の最も離れた地域までも輸出された。たとえば朝鮮北部の楽浪郡(らくろうぐん)でも見つかっている。
「馬蹄」型の箱や入れ子の奩(れん)には、歯の大きさの様々な木製の櫛が入っていることもあり、漢時代の墓でよく見つかる。長沙地方だけに限ってみても、長沙近くで発見された竹の箱に、他のものと混じって入っていたし、1953-54年に同じ町の壁の外にある墓でも見つかった。同類の櫛が西洋にも保存されている。たとえばポール・シンガー博士のコレクションやMeidaozhaiコレクションのものである。

Reference(s) : クリスチャン・デイディエ,「芸術とマチエール」,パリ/ロンドン,オリエンタル・ブロンズ社 1998年,p.49

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余伟超(ユー・ウェイチャオ),『中国古代への旅』2巻,北京,モーニング・グローリー・パブリッシャーズ,1997年,p.182
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ウィリアム・ワトソン,『中国の考古学』ロンドン,マックス・パリッシュ,1960. p.28,94番
ジーン・フォンテイン,ウー・タン『発掘された中国の過去』ボストン,ボストン美術館,1973年,p.87, 35,37,38番
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『チェルヌスキ美術館,1993-2004の中国美術取得作品』Paris-Musées(パリミュゼ)/Findakly(フィンダクリ)刊, 2005, p.50-51