Jarre

Anonyme

Entre 618 et 907
Grès, Céramique tournée, Glaçure = Couverte
Vaisselle et ustensile de cuisine, Jarre
Don manuel : Laveaucoupet, Paul-François de

M.C. 9561

ずんぐりした形にもかかわらず調和のとれたこの甕は、チョコレート色に軽く黄褐色の斑点のある半透明でなめらかな釉薬がかけられている。肩のところに泡だった流れるような青色がかった釉だまりがあり、それが膨らみ部分の下部で大きな雫になって、甕をいっそう際立たせている。膨らみ部分の下部と平らなベースとは釉薬がついておらず、黄褐色の素地をそのままみせており、そこにはろくろかけの跡が残っている。邢(けい)の白磁や越(えつ)の青磁のように有名ではないが、北中国の黒い炻器は唐の時代の最も優れた高温焼成の陶磁器のグループである。4世紀に生まれた伝統を引き継いだこの炻器は、8世紀と9世紀には、液体が跳ね返った明るい色の跡を見せることが多い。このような効果は、焼成する前に、酸化鉄で色をつけた釉薬の上に植物性の灰をまぜることで得られる。灰は、液状の釉薬を分断し、高温のときは一様なのに、冷めて行く段階で違った変化をさせる。そこで極小のバラスのクリスタルができ、懸濁状コロイドとなって残り、光と作用するのである。焼成は釉薬が濃く色づくまで行わない。そのため斑点は色が明るいのである、この素材が作り出す面白さは三彩の釉薬の自由な美学と通じるものだ。
この炻器は、主に河南省で作られたが、山西省、陝西省、浙江省でも作られた。すでに唐朝の時代から、南卓が著した音楽書、「羯鼓錄」のなかに、河南省の鲁山の名が表面に斑点のある太鼓の胴に関連して記されている。チェルヌスキ美術館の甕がどこの窯から出たかを知るのは難しい。縞模様な滲むようになって境界がぼやけているところは河南省賈区のHuangdao窯の特徴だ。素地や釉薬にみられる小さい難点(素地はところどころに暗い色の外殻、釉薬は、だまやとがったところ、軽い欠落)は素材の準備が不十分なところから着ており、これもまた同じ窯の特徴である。まったく同じ兆候が、カンザス・シティのネルソン=アトキンス美術館所蔵の甕にも見られる。この作品には脚がついていて、甕の外側はチェルヌスキ美術館の甕のベースと同じように斜めにカットされている。しかしながらチェルヌスキ美術館の甕には半透明の釉薬がかかっており、Huangdaoの典型的な炻器が、つやのある透明な釉薬がかかっているのとは異なる。それに釉だまりの外観は東京の出光美術館に所蔵されている鉢とよく似ているが、この鉢は、W.ウエストンによって河南省の段店(ドゥアンディアン)窯のものと突き止められている。今のところ、河南省というだけで、具体的な出処を決めるのは冒険的に過ぎるだろう。

Reference(s) : ジル・ベガン,『チェルヌスキ美術館のアジア芸術』, パリ,Paris-Musées(パリミュゼ)/Findakly(フィンダクリ)刊, 2000年, p.117-118。