Chat dans un champ de melons

Sano, Kosui, né en 1896, décédé en 1960

Vers 1925
Encre
Peinture
Achat

M.C. 2013-1

この掛け軸は、『瓜畑の猫』と題された、佐野光穂の作品である。署名は契明とあり契明の印がある。契明は、この芸術家の号のひとつである。金色の目をした黒猫が、瓜の葉の上で寛いでおり、瓜の蔓は絵の上の方まで延びて、奥深さを引き出している。葡萄の若枝は、琳派の系統でたいへん好まれる主題だが、月や季節に結びつけられていることが多い(朝顔は6月、瓜は8月、葡萄は秋を象徴する)。現実にあるものを描写する絵は、19世紀絵画、特に浮世絵(とりわけ歌川豊国)において中心的になり、19世紀末から20世紀の日本画家もこれを踏襲した。したがって佐野光穂の絵は、日本の古い絵画と新しい絵画の橋渡しをしている。たらしこみ(16世紀に開発された)のテクニックを用い、金のラヴィと組み合わせている。ラヴィは、あらかじめ濡らした表面にミネラルあるいは絵の具をたらすことで、色にぼかしを入れる方法だ。むらが出来て質感を出し、リアルなタッチを与える。画材にどれくらい絵の具が吸われるかに効果のすべてかかっているので、あらかじめ狙って効果を出すことはできない。画材はふつう画用紙が使われるが、ここでは絹布である。絹布に絵を描くには細かいコントロールが必要だ。動物の毛皮のぼかした表現と葉の縁のぎざぎざは、没骨法(輪郭の線を描かず、色の濃淡だけで描くテクニック)を思わせる。
佐野光穂(号は契明、泥牛、晃林)は長野県の出身。1914年に京都に移り住み、写実を旨とする四条派の菊池契月(1879-1955)に弟子入りする。富田渓仙(1879-1936)に日本画の革新的な技法を学ぶ。少しの間、神戸に住んだ後、1928年に京都に戻り、動物を主題とする絵を専門に活動を続ける。帝展と院展で歓迎された。