Coupe

Entre 1200 et 1400
Grès, Céladon
Coupe (récipient)
Don fouilles : Mission Janse Indochine (1934-1935)

M.C. 8261

この杯の形と装飾は明るい色の素地を型に入れることで得られたものだ。型から出して乾かしたあとで、鉄酸化物を含んだ液状の釉薬が脚を除いた全体にかけられた。脚は焼成の際にガラス状になる釉薬が杯を窯の枠に付着させて取れなくならないように釉薬がかかっていない。窯の酸素が足りない空気のなかで、鉄酸化物はオリーブ色から茶色にかけてのあらゆる色合いに作品を色付ける。その色のニュアンスは多岐に渡っており、ベトナムの陶工たちがとりわけ苦心したもののようだ。
また、オリーブ色の釉薬は中国の青磁のそれよりもさらさらしており輝度が高い。へこんだ部分にたまって凸状になった装飾のコントラストを強調している。
ここでは、軽く浮き上がった糸状のものが、杯の見込にある菊の花びらと底にある二匹の魚をはっきりと浮き上がらせている。
横向きで泳いでいる二匹の魚の絵は、少なくとも漢の時代以降の中国の影響のあるエリア全域に広く見られる。水のなかを優雅におよぐ魚を見て、古代人はそこに広い意味での調和のシンボルを見た。調和とはつまり存在とそれを取り巻く環境の完全な一致のことである。魚たちの位置はまさしく陰と陽または太極圖を示すもので、世界は永遠に結びつけられた女性原理と男性原理から成っているという中国の考え方につながる。
それはまた豊穣性を連想させるものでもある。魚は無数の卵を産むからであり、また「豊富」という意味にも通じる。中国語では、鱼 と 餘 がともに yúと読む同音異義語なのだ。
 

Reference(s) : モニク・クリーク  『ベトナム チェルヌスキ美術館のベトナムコレクション』 パリ、Paris-Muséés (パリミュゼ);Findakly(フィンダクリ)刊, 2006. p.119.